「モダンでありながらどこか懐かしい温かみを感じさせるフォルムと素材。半世紀近くを経た今もなお魅力を失わないデザインの強度。そして日本の伝統的な建築にも通じるシンプルな機能美。」これは、最近目を通していた古い雑誌にあったデニッシュ・モダンハウスについて書かれた一節です。デンマークの建築やデザインは50年代に“黄金時代”と呼ばれ、世界的に高い評価を受けていました。日本における最近のスカンジナビアンデザイン再評価の動きは、冒頭の一節にその理由が内包されている様に思います。
今回、私たち那須倶楽部は無垢材の家具や手作りのお菓子、こだわりのコーヒー等、寛ぎの時間を大切にする夫婦から依頼を受けました。2人は「あまり大きな家は要らないが、住まいの中にある時間を大切にしたい」という希望があり、そこで私たちは少し変わったすまいの提案を行いました。
この「作品」は「デザイン」が生活をより豊かにするという事、その「デザイン」には人間的な暖かみが必要とされた、ミッドセンチュリーにおけるデニッシュ・モダンハウスからインスピレーションを受けています。
地上より約1m浮いたフロアが特徴のCSH#15。印象的な外観だけでなく、インサイドリビングにある薪ストーブやアウトサイドリビングにあるシンボルツリーが美しいルームスケープをつくり出しています。CSH#15はコンパクトな大きさながら、心地良い日常を提供しながら味わいを深めてゆくビンテージ・チェアの様なすまいを目指して設計を行いました。
Entrance / エントランス
緩やかな階段を上ると、大きな開口から美しいデザインの薪ストーブとシンボルツリーにより床に映し出された光と影の美しい紋様が出迎えてくれるエントランス。
Living dining kitchen/ リビング・ダイニング・キッチン
通常、この規模の建物では考えられない22帖もの広さを持つリビング・ダイニング・キッチン。リビングの中心には360°回転するユニークな最新型の薪ストーブを設置。室内だけでなく、デッキのある屋外からも暖を取る事が出来ます。また、オーナーの好みに合わせて作るオーダーメイドキッチンは不要の際、壁に収納する事が可能です。
Japanese room / ジャパニーズルーム
私たち那須倶楽部の手掛ける和室は通常のものとは少し趣が異なります。ベンチ、ベッド、個室とその時の用途に合わせて可変する「家具」というべきものとなっています。
Master bed room / 主寝室
平屋という贅沢な間取から、全ての部屋は引戸を開けると1つの大空間となります。ある意味ホテルといってよいこの空間構成は、住み心地もホテルの様な快適性をつくり出します。
Guest room / ゲストルーム
将来子供部屋として用途変更が可能なゲストルーム。トップライトを設置し、ゲストや子供が星を見ながら眠れる事はもちろん、天候の悪い日や花粉の舞う時期は衣類の乾燥室としても利用出来ます。
Wash room / ウォッシュルーム
トイレ・洗面・バスを1つにまとめ、ホテルスタイルとしたウォッシュウルーム。今回ウォッシュルームには坪庭/バスコートを設置、明るく開放的な空間となっています。
Deck & Garden / デッキ・ガーデン
南北に2つ設けたウッドデッキ。特に南側はアウトサイドリビングとして室内リビングと連続性を持たせ、内外との境界をあいまいにして広さと開放感が得られる様、演出しています。また南デッキにはシンボルツリーを設け、外から視線を遮る目隠しとしてはもちろん、季節を感じられる自然の暦としての機能も持たせています。
所在地/栃木県宇都宮市
仕様用途/専用住宅
家族構成/1世帯
構造/木造在来工法/平屋建
床面積/96.06u [ 29.0坪 ]
デッキ/19.87u [ 6.0坪 ]
バスコート/3.31u [ 1.0坪 ]