鏡を、空間を彩るオブジェとして
2026.07.29
鏡を、空間を彩るオブジェとして

鏡は、ただ人の姿を映すためだけのものではありません。
光を受け止め、景色を切り取り、見る人の立つ場所によって異なる表情を見せる。
そこには、実像と虚像のあわいを漂うような、鏡花水月の美しさがあります。
この鏡を設えたのは、施術室の一角です。
空間の着想となったのは、この店舗のコンセプトである「入江」。
陸地に静かに抱かれた水面と、そこに生まれる光の揺らめき。海面に映り込み、ほどけ、また形を変えていく風景を、大小さまざまな鏡によって表現しました。
鏡は、作家の手によるものです。
ステンドグラスの技法を用い、一枚ずつ異なる輪郭に仕立てられています。
均質な工業製品にはない、わずかな揺らぎ。
その不均衡さが、手仕事の空気を静かに纏わせ、空間に奥行きと余韻をもたらします。
背景となる壁には、オリジナルの塗装仕上げを施しました。
土や岩肌を思わせる深い色と質感の上に鏡を点在させることで、穏やかな入江に浮かぶ水面の断片のような景色が生まれています。
正面から見ると外の緑を映し、少し位置を変えると家具や光を映す。
見る人が一歩動くたび、鏡の中の風景も絶えず変化していきます。
建築やインテリアは、単に美しく整えるためのものではありません。
その場所に込められた思想や物語を、素材や光、形によって具現化するための手法でもあります。
鏡を、設備としてではなく、空間を彩るオブジェとして考える。
施術を受ける時間だけでなく、ふと視線を向けた瞬間にも、小さな発見や心の揺らぎが生まれるように。
静けさの中に豊かな表情を秘めた、質の高い施術空間を目指しました。